Pretty Man Lyrical

主にヒップホップのリリックを掘り下げるブログ。著者のヒップホップ知識、英語力向上が趣旨

Smuckersに見る、三者三様のSwag

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Tyler the Creator「Cherry Bomb」を大音量で聴きながら車を転がすのが最近の癒し。とてつもないベース音が、体が悪くなる勢いで響くのがヤミツキになる。タイラーが「リリックとかどうでもいいから全体のヴァイヴスを感じてほしい」と言った通り、ヴォーカルも一つの「音」としてトラックに混ざり合ってるといった感じか。

 

ただまぁ、リリックどーでもいいとか言いつつ、ストーリーテリングのアルバムなんて作っちゃって!とつっこみたいが、過激な側面ばかり捉えられることに関しての反発なんだろう。リリックを聴くな!ということではなく、「表面だけじゃなく、ちゃんと中身、俺の言いたいことをわかろうとしろ」という意味と思った。

 

それはさておき、アルバムのハイライトは、Lil WayneKanye Westという今の頂点にいるラッパー二人を招いた「Smuckers」というのが世間的な評価だ。確かにすごい良い曲だが、面白いのは他のトラックと比べて、この曲はずいぶんオールドスクールマナーのヒップホップビートだ。タイラーらしいシンセのトゲトゲなりメロディアスな上モノはなく、地味なループトラック。ゲストヴァースもあるからとは思うが、要はこれがいちばんリリックを聴かせるために作られたのか?なんて思ったり。

 

アルバムの他のリリックもちらっと読んだり(ヒアリング力無振り)した中で、さっき言ったような「ちゃんと評価しろ」的なラインが見られたんだけど、この曲もまさにそう。ただ、同時に「成功者」としてもラップしてる。何より、成功者ゆえに大物ラッパーを招けたんだもんな。

 

で、なかなか3人のラップを比較するのも面白い。タイラーは、割と素直なラップで、面白いラインもありつつ、ありのままに気持ちを吐き出したラインもある。ムカつくことも、嬉しいこともありのままラップするタイラーが好きだ。

 

I got banned from New Zealand, whitey called me demon
And a terrorist, God dammit I couldn't believe it

ニュージーランドに入国を拒否された。白人は俺らが悪魔の使いだとか、テロリストだとかぬかしやがる、ふざけんな

Thats a dream car
Got a four ten, of that same year I was born
That's that one nine nine one

 

俺は自分が産まれた年の車を持ってる、1991年モノだ

 

Put that fuckin' cow on my level, cause I'm raisin' the stakes
Mom I made you a promise, it's no more section 8
When we ate its the steaks, now our section is great

Cause that's the level I'm at

俺の土地(level)に牛でも買うかな、だって俺はいい身分(stakes)になったんだ

ママ、約束するよ。もうセクション8の家なんて住まなくていい

今やステーキを食えるんだ、いい身分になったもんだ

俺はそれ程高いレベルにいる存在

 

一方、カニエはアホっぽく、かつ尊大に自分のすごさをアピール。まぁ、この人の場合「俺は神様だから、マッサージはよ、クロワッサンはよ」って言うくらいですからね…。

 

Why don't they like me?
Cause Nike gave lot of niggas checks
But I'm the only nigga ever to check Nike

なんで俺を好きになってくれねぇんだ?

みんなナイキのチェックを着てるってのに

俺がナイキにあれこれ口を出せる黒人だからか?

 

I was textin' God
He said "I gave you a big dick, so go extra hard"

神様にメールしたんだけど、そしたら

「デカいチンコをやるよ、何発もデキるだろ?」だってさ

 

カニエのすごいところは、「いやいやありえねぇよ!」ってことを言ってるはずなんだけど、「カニエなら確かに一理あるかも…」と思わせたり、実際にすごいことしてるってことだ。だからこそ彼は嫌われ者でありつつ愛される者でもあるわけだ。

 

んで、ウィージーは、相変わらずウィットに富んだライミングで、笑わせてくれつつ、言葉の選び方にすげー、となる。

 

It's Tunechi, homie, master of ceremonies
I knock 'em down, domino effect, no pepperoni

俺はトゥーンチ、MCやってるぜ

ドミノみたくお前らを倒してやるよ

ペパロニ(ピザ)じゃないぜ

(ドミノピザとドミノのワードプレイ)

 

I stick my rollie in her mouth, let the time come

彼女の口に俺のモノを突っ込む、時間が来たぜ

(Rollie=RolexとTime Come=時間が来た、Rollie=ぼっこ=チンコとTime Come=射精のワードプレイ)

 

You pussies prayin' that we squash the beef like zucchinis

てめぇら腰抜けは俺がまたズッキーニみたいにビーフを起こすと思ってるんだろ

(日本語訳じゃ意味不。Squash=首を突っ込むorつぶす、とSquash=ウリ科の野菜、とのワードプレイ)

 

相変わらずウィージーの発想力はすごい。なんだよズッキーニって。ラザニアと同じくらい謎だって。

 

こう並べてみると、ほんとラップのリリックというのは多様だ。掘り下げるのが面白いほんと。確かにウィージーやカニエのリリックはタイラーより上手だ。でも、俺はタイラーのリリックに親近感を持てて、好きだ。

 

とりあえず、Cherry Bombはまだまだしばらくドライブのお供になりそうです。