Pretty Man Lyrical

主にヒップホップのリリックを掘り下げるブログ。著者のヒップホップ知識、英語力向上が趣旨

Tyler the Creatorは「Bastard」でなぜSarahを食べたのか番外編

Bastardを聴くよりCherry Bombを聴くのに忙しい最近。

 

そんな中、Bastardの2曲目「Seven」に衝撃のリリックを見つけた!!!(ヒアリング無振り)

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Odd Future some Nazis, Black Nazis don't copy

We perfect, you sloppy, hotter than Saki Takei

OFは現代版ナチ、ブラック・ナチだ、マネっこじゃないぜ

俺らは完璧、お前らはダセぇ、タケイサキよりホットだぜ

 

タケイサキ…?誰だ?と思われる方多数だろう。ちなみに俺はすぐにわかったのです。

 

そう、武井咲(タケイエミ)だ!

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俺は「そんな読み方ない」と言って友達としゃべるときもわざと「タケイサキ」と言ってるんだけど、まさかタイラーも、というか外国でも間違って読まれているとは!!!というか、タイラーは「咲」という字の本来の読みを知ってて間違って読んだのだろうか?!

 

なんか、自分が正しいと証明された気がする(間違ってます)。ちなみに、アルバムが出たのは2009年。武井サキは今ほどメジャーではない存在だったはず。なぜ知ってたの???

 

さらにどーでもいいけど、筆者は武井サキの顔面は好きじゃありません。平凡、という評価。

 

というか、NazisとSakiとTakei(タキィ、と発音してる)で韻踏むとか…すごいのかなんなのかわからんw

Tyler the Creatorは「Bastard」でなぜSarahを食べたのか①

さて、ドレイクはちょっと置いといて、せっかくTyler the Creatorの話になったので、今のCherry Bombを聴くからこそ、デビュー作であるBastardに戻ってみようと思う。

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Tylerは、今まで虚構を演じ、虚構にフラストレーションのはけ口を作った。そして、虚構であるが故、「これはフィクションです。実在の人物や団体とは 関係ございません。」と言い張った(Radical参照)。虚構の世界の中の設定は、ドクターTCという精神科医のもとで、タイラーが精神鑑定を受けると いうもの。3rdのWolfにおいてはちょっと違って、2人の男が女の子を取り合う、というか1人の女の子をめぐって殺す殺さないの話になる、というも の。登場人物は、タイラー本人、Wolf haleyAce the CreatorSarah(Salamと同一?)、Tron CatSam、こんなもんか。ぜんぶタイラーの脳内で起きている出来事。で、原点となるのがBastard。さらにその1曲目であるタイトルトラックで は、Gobrin~Wolfにつながるタイラーのラップのテーマが淡々と語られている。

My father's dead well I don't know, we'll never fuckin' meet
俺の父さんは死んだのか?わかんねぇよ、会うこともないだろうし

I just want my father's email
So I can tell him how much I fuckin' hate him in detail
父さんのメールアドレスが知りたい
そしたら事細かに嫌いな理由を書き連ねてやるのに

まずは父親の不在。タイラーを語るうえで欠かせないテーマ。ただまぁ、ブラックコミュニティにおいてシングルマザーというのは、日本に比べて多い。文化の 違いなんだろうが。だからタイラーが特別ってわけでもないし、弟分のEarl Sweatshirtも片親だ(ただし父親はわかってて、有名な詩人)。しかし、タイラーは父親の不在に対してひどくコンプレックスを持ってて、それが Bastardを形作ることになる。Bastardとは私生児の意味だ。

I'm tall, dark, skinny, my ears are big as fuck
Drunk white girls the only way I'll get my dick sucked
のっぽで、黒い、ヒョロくて、アホみたいに耳がデカくてダサい俺
酔っぱらった白人のオンナくらいにしかチンコをしゃぶってもらえない

Raquel treat me like my father like a fuckin' stranger
She still don't know I made Sarah to strangle her
ラクエルは父さんみたいに俺のことを知らんぷりする
代わりにサラを「作って」彼女の首を絞めてる

次に、女性に対する(自分に対する)コンプレックス。というか、女性に対しても「父親」という表現が登場するくらい、タイラーの父親への憎しみは深い。こ こでキーになる、というかこれから書いていこうとしてることの主題が、Sarahという女性。サラは、簡単に言えば脳内彼女。ただ、一口にそう言っていい ものか…。というのも、このアルバムの大半は、サラに対する暴力行為(監禁、レイプ、ビデオ撮影、そして殺害)が主な内容。普通、現実で女性にフラれたり して、妄想にふけるとすると、イチャイチャだったりエロい妄想をするはず。なぜポジティブな妄想ではなく、殺しやレイプなど激烈ネガティブな妄想をするの か。そう思ったのがこれを書くきっかけ。

もしや、殺人やレイプはタイラーにとってポジティブなことなのか…?タイラーは殺人鬼なのか…?


この疑問に関して、とりあえず「悪魔」を自称しているタイラー。

Somebody call the pastor, this bastard is so posessed
This meetin' just begun, nigga I'm Satan's son
牧師を呼んでくれ、俺は憑かれている
カウンセリングは始まったばかり、俺は悪魔の子

This album packs enough evil that you can't fit inside a jansport
このアルバムにはジャンスポーツのリュックには入りきらない悪意が詰まっている


がしかし、この「悪魔」発言は自分が出来損ない/おかしい頭の持ち主であることを自認してのものだ。ゆえに、これまた大きなテーマである自殺願望も語られる。

I know you fuckin' feel me, I want to fuckin' kill me
But times I'm so serious you think I'm silly
俺のことわかるだろ?自殺したいんだ
マジで言ってんのに、気が狂ったと思ってるだろ?

My wrist is all red from the cutter
Drippin' cold blood like the winter
手首はリストカットで血まみれ
冬のように冷たい血が流れ落ちる


ほんと、タイトルトラックのリリックを読めば、Wolfまでのタイラーのラップのテーマを全部把握することができる。もちろんこのアルバムも。まとめると以下の通り。

タイラーは父親がいないことでひどく心を痛めており、父親に対する憎み、好意を寄せる女性に相手にされなかったことへの憎みで、憎しみにあふれた脳内に なってしまった。自分でもこんなネガティブな思考じゃダメだと思いつつ自制できないタイラーは、自殺願望が強くなる。さらに、実際に殺しやレイプをしない よう、脳内にサラという女性を作った。それも含めていよいよ精神的にマズい、ということで精神科医のもとを訪れ、自分の頭の中について語っていく。

これがBastardの流れ。とりあえず、ラクエルへのフラストレーションのはけ口がサラだったのです。なのに、そんなサラをなぜ殺し、食べてしまったの か…?ということで、今後アルバムの各曲を見ていきたいと思うのです。このアルバムは、GoblinやWolfと違ってストーリーテリングではない、と思 う。なんせ、リリックを掘り下げていきます。

Smuckersに見る、三者三様のSwag

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Tyler the Creator「Cherry Bomb」を大音量で聴きながら車を転がすのが最近の癒し。とてつもないベース音が、体が悪くなる勢いで響くのがヤミツキになる。タイラーが「リリックとかどうでもいいから全体のヴァイヴスを感じてほしい」と言った通り、ヴォーカルも一つの「音」としてトラックに混ざり合ってるといった感じか。

 

ただまぁ、リリックどーでもいいとか言いつつ、ストーリーテリングのアルバムなんて作っちゃって!とつっこみたいが、過激な側面ばかり捉えられることに関しての反発なんだろう。リリックを聴くな!ということではなく、「表面だけじゃなく、ちゃんと中身、俺の言いたいことをわかろうとしろ」という意味と思った。

 

それはさておき、アルバムのハイライトは、Lil WayneKanye Westという今の頂点にいるラッパー二人を招いた「Smuckers」というのが世間的な評価だ。確かにすごい良い曲だが、面白いのは他のトラックと比べて、この曲はずいぶんオールドスクールマナーのヒップホップビートだ。タイラーらしいシンセのトゲトゲなりメロディアスな上モノはなく、地味なループトラック。ゲストヴァースもあるからとは思うが、要はこれがいちばんリリックを聴かせるために作られたのか?なんて思ったり。

 

アルバムの他のリリックもちらっと読んだり(ヒアリング力無振り)した中で、さっき言ったような「ちゃんと評価しろ」的なラインが見られたんだけど、この曲もまさにそう。ただ、同時に「成功者」としてもラップしてる。何より、成功者ゆえに大物ラッパーを招けたんだもんな。

 

で、なかなか3人のラップを比較するのも面白い。タイラーは、割と素直なラップで、面白いラインもありつつ、ありのままに気持ちを吐き出したラインもある。ムカつくことも、嬉しいこともありのままラップするタイラーが好きだ。

 

I got banned from New Zealand, whitey called me demon
And a terrorist, God dammit I couldn't believe it

ニュージーランドに入国を拒否された。白人は俺らが悪魔の使いだとか、テロリストだとかぬかしやがる、ふざけんな

Thats a dream car
Got a four ten, of that same year I was born
That's that one nine nine one

 

俺は自分が産まれた年の車を持ってる、1991年モノだ

 

Put that fuckin' cow on my level, cause I'm raisin' the stakes
Mom I made you a promise, it's no more section 8
When we ate its the steaks, now our section is great

Cause that's the level I'm at

俺の土地(level)に牛でも買うかな、だって俺はいい身分(stakes)になったんだ

ママ、約束するよ。もうセクション8の家なんて住まなくていい

今やステーキを食えるんだ、いい身分になったもんだ

俺はそれ程高いレベルにいる存在

 

一方、カニエはアホっぽく、かつ尊大に自分のすごさをアピール。まぁ、この人の場合「俺は神様だから、マッサージはよ、クロワッサンはよ」って言うくらいですからね…。

 

Why don't they like me?
Cause Nike gave lot of niggas checks
But I'm the only nigga ever to check Nike

なんで俺を好きになってくれねぇんだ?

みんなナイキのチェックを着てるってのに

俺がナイキにあれこれ口を出せる黒人だからか?

 

I was textin' God
He said "I gave you a big dick, so go extra hard"

神様にメールしたんだけど、そしたら

「デカいチンコをやるよ、何発もデキるだろ?」だってさ

 

カニエのすごいところは、「いやいやありえねぇよ!」ってことを言ってるはずなんだけど、「カニエなら確かに一理あるかも…」と思わせたり、実際にすごいことしてるってことだ。だからこそ彼は嫌われ者でありつつ愛される者でもあるわけだ。

 

んで、ウィージーは、相変わらずウィットに富んだライミングで、笑わせてくれつつ、言葉の選び方にすげー、となる。

 

It's Tunechi, homie, master of ceremonies
I knock 'em down, domino effect, no pepperoni

俺はトゥーンチ、MCやってるぜ

ドミノみたくお前らを倒してやるよ

ペパロニ(ピザ)じゃないぜ

(ドミノピザとドミノのワードプレイ)

 

I stick my rollie in her mouth, let the time come

彼女の口に俺のモノを突っ込む、時間が来たぜ

(Rollie=RolexとTime Come=時間が来た、Rollie=ぼっこ=チンコとTime Come=射精のワードプレイ)

 

You pussies prayin' that we squash the beef like zucchinis

てめぇら腰抜けは俺がまたズッキーニみたいにビーフを起こすと思ってるんだろ

(日本語訳じゃ意味不。Squash=首を突っ込むorつぶす、とSquash=ウリ科の野菜、とのワードプレイ)

 

相変わらずウィージーの発想力はすごい。なんだよズッキーニって。ラザニアと同じくらい謎だって。

 

こう並べてみると、ほんとラップのリリックというのは多様だ。掘り下げるのが面白いほんと。確かにウィージーやカニエのリリックはタイラーより上手だ。でも、俺はタイラーのリリックに親近感を持てて、好きだ。

 

とりあえず、Cherry Bombはまだまだしばらくドライブのお供になりそうです。

 

 

 

DrizzyとWeezyの「引退話」

引退するする詐欺といえば、Jay ZThe Gameと数多くいるものの、ここ最近のLil Wayneは負けてない。そもそも、Weezyが引退する理由というのは、「ラップに対する興味が薄れてきた」ことである。才能の枯渇ではなく、他のビジネスや私生活を満喫したいと。なのに、まだ引退してない。正確には、引退させてもらえない、と言うべきなのか。

 

御存じ(?)の通り、所属レーベルCash MoneyのボスBabyことBirdmanと揉めに揉めているウィージー。ラストアルバムと事あるごとに言っている「Tha Carter V」を、完成してるのに出してくれない、レーベルと契約切りたいけど出してくれない、などなど「囚われの身」を主張してるのだ。その後、「待たせてごめん」「待たせてごめん2」「ウィージーに自由を!」など怒涛のミックステープリリースを続けてる。いや、まだまだ現役でいけるやないですか、と思った人多数であろう。ある意味、これがベイビーの狙いだったのか…?

 

それはさておき。そんなWeezyの「6 foot 7 foot」にはこんなラインがある。

 

You know Imma ball til they turn off the field lights

Fruits of my labor I enjoy while they still ripe

ライトが消されるまで野球続けてやるよ

熟しているうちに実ったものを食わせてもらおう

 

ちょっと訳がつたないけど、つまりはここで「引退」について言及してる。人気のあるうちはBall(はぶりよく金を使う)してやんよ、熟してるうちに(金のあるうちに)働いて実った果実を(稼いだ金)食ってやるよ、と。つまりは、終わりがあることを示唆してる。ウィージーは引退について触れてきてるから違和感がないけど、人気絶頂のミュージシャンが「人気あるうちは、今のうちに」なんて言うのはなんか場違いというか、もっと頑張ってくださいよー、って感じるのは俺だけか。

 

ここでようやくDrizzyの話になるわけです。ん?と思ったのが、1stアルバムの「Over」。タイトル通り、「終わる」まで突っ走ってやるよ、まだ終わらねぇけどな!という内容で、基本はやっぱりボースト(自慢)。メジャーデビューしたての新人が1stでいきなり「終わり」について語ってるのか???

youtu.be

更に困惑したのが、曲中でこんなことを言ってるからだ。

 

I really can't see the end getting any closer

俺が終わってる姿がマジで想像できない

If you thinkin Imma quit before I die, dream on

俺が死ぬ前に辞めるとか、何夢見てんだか

 

ちなみに、この2ラインはつながってなく離れてます。ぬぬぬ?「まだ来ないけど終わりが来るまで満喫してやる」なんて言ってて、なぜ「死ぬまで辞めない」と言うのか???

これは推測だが、2ライン目のあとにこんなラインが。

 

They treat me like a legend, am I really this cold

伝説的存在のように扱われる俺、そんなにイケてる?

 

つまり、死んだ後も「伝説」として「終わらない」、もし終わるとしたら、死んだあとにほんとに忘れ去られたとき、という意味なのか?と解釈してみた。

 

 

とかタラタラ書いてるうちに、最新アルバム(なのか?)の「If youre reading it's too late」を聴くと、なんと冒頭のまさに「Legend」では

 

If I die, Imma Legend

死んだら、俺は伝説になるに違いない

 

と言ってるではないか!珍しく的を得ていたのか?!

 

つまり、引退したところで、ウィージーとドレイクにはなんも関係ねぇと。むしろ引退してからのほうが、金を稼ぐなり、逆に評価が高まったりするくらいだと。だからこそ、軽々しく(?)「引退」を口にできるわけですね。

 

更に、ドレイクの場合インタビューで、「ラップだけで億万長者にはなれない」と言ってる。ドレイクももはやラッパーの範疇には収まらずに稼ぎたいわけだ。

 

レーベル名だけあって、YMCMBの面々はカネに対して貪欲、なのか?ニッキーは聴かないからわからんが…。それはさておき、Cash Moneyとの対立はどうなんのかね???続報ないけれど。。。

ダサ男から屈指のモテ男へ?Drakeの打ち上げた「花火」

このブログを作る一つのきっかけとなったのが、以下の記事/ブログ。

 

Pound Cake〜ドレイクの同窓会リベンジ | T H A T S * I T C R A Y !

 

Odd Future好きな自分としては、タイラーの記事とかがすごく面白かったし、そのほかのリリック解説にしても、ますますヒップホップのことが好きになるようなものばかり。その中で、最初は「聴かず嫌い」してたDrakeについても、まさにこの記事を読んだのが好きになるきっかけで、もう一つは、モテ男ベテランラッパー(…って言っていいよね?)のFabolousが、ドレイクを褒めてたこと。いわく、「みんなあれこれ言うが、彼はいいリリックを書く」と言うのです。ヒップホップにはお堅いニューヨークのラッパーが。(かたやWu TangのGhostface Killahはドレイクもといオーブリーを「一番ワックなラッパー」と言ってるが…)俺は別にLosoを聴くわけではないんだけど、そんな彼が褒めるドレイクとは…?と気になったのです。

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で、話は戻って、彼のオフィシャルアルバムとしては最新作の「Nothing was same」「Pound Cake」内にて語られた「ハブられてた過去の自分(意訳)」がなかなか面白く(上記ブロク内の素晴らしい妄想話も必見)、あれ?今はモテモテで通ってるけど、昔は俺みたいな、ダサい奴だったのか???と、なんか勝手に共感してしまったのです。もっとも、俺は今もダサいノーマルな社会人なのですが…。

 

確かに、強気なフロウを聞かせる「Worst behaviar」も、ラッパーへの攻撃ってだけじゃなく、「過去の自分をコケにした奴ら」へのメッセージともとれる。「Started from bottom」では、「ニセモノの友達なんかいらん」と、有名になってきてから寄ってきた「お友達」を手で払いのけてる(Kendrick Lamar「Bitch don't kill my vibe」で同じことを言ってるっけ)ほうほう、これはいよいよ…。そこで、一気にファーストアルバム「Thanks me later」へ戻ってみることに。一発目のFireworksでは何をしゃべってるのか。

 

実は、ドレイクを聴かず嫌いだった時期にこの曲は聴いたことがありまして。でも、「なーに新人のラッパーがいきなりAlicia Keysとか呼んじゃって!しかも一緒にフック歌ってんじゃねーよ!」と、言ってしまえば偏見を持ってスルーしてたわけです。なんというバカ。おかげで最近になって買いましたよアルバム。

 

それはさておき。アルバムの一発目のこの曲、先の「過去のイケてない自分」を意識して歌詞を掘り下げればなかなか面白い。

 

あ、そういえば。解説としてすごく重宝してるのが、ご存じrapgenius

 

Rap Genius

 

もちろん英語なので、解説も訳さなきゃいけないが、それにしてもとても役に立ちます。感謝。

 

ドレイクのスタイルとして、それこそR&BでいえばNe-Yo的なリリックがあると思う。今までのラッパーは、マッチョイズム(資産的な意味でも、セクシャルな意味でも)なリリックが主だと思うんだが、ドレイクは2ndヴァースではひたすら未練がましくRihannaについてライムしとる。「あれは愛じゃなかった」とか、「僕がウィットを持ってたから回避できた」とか、「僕は本気だったけど、君は本気じゃなかった」とか…終始いい男アピール。でも、なんたってヴァースの一番最初は、「俺はめちゃくちゃ紳士、俺と寝るべきだよ」だってばよ。つまりは、強がりで恨みつらみを言ってるだけなのだ。あれ?モテ男…?

 

反面、昔の知り合いを見返すようなのが1stヴァース。「もう金なしじゃ生きていけない」(メジャーデビュー作の第一声がこのライン!)、「コンクリートから花が咲くなんて思わなかっただろ?」、「まわりのヘイターすら暖かく抱きしめてあげる」など、痛快だ。言ったれ言ったれ!

 

この、モテ男ぶってる背景に、過去のダサ男なドレイクがいる、となるととても彼のリリックには共感できる。ただ単に「歌えるラッパーとしてヒップホップシーンに白い目で見られていた」ととらえることもできるが、どうもそれだけには思えない。ましてや「Pound Cake」の件のラインを聴いた後には。

 

そしてさらにダメ押し。3rdヴァースにある以下のライン。

 

“母さんを豪邸に住まわせて、デカい街に連れ出して案内してやったんだけど、「前より一人ぼっちになっちゃった気分」なんて言うんだ”

 

ダサ男というか、つまりは結構普通な男の子だったのだ、ドレイクも。金持ってますぜアピールやモテ男アピールをしてはいるが、その背景には必ず過去の自分がいる。たまに強がったりする。親しみやすい考えの持ち主なんだと思う、ドレイクは。そういう意味で、彼はとても稀有なラッパーだ。Losoじゃないけど、心を動かされたラインだった。

 

打ち上げ花火のように、「飛び上がる」。打ち上げ花火のように、「はじけ散る」。

 

こう見ると、いまんとこドレイクってライムで聴かせるってよりか、リリックの内容自体に重きを置いてるのかな?なんせ、しばらくドレイクを掘り下げてみるつもりです。まぁ、次いつ書くかはわかりませんが。。。汗